ランサムウェア対策の次の一手:情シス向けEDR入門とSCS評価制度の備え方

HOW-TO

セキュリティ対策を強化しないといけないと分かっていても、「何から手をつければいいか分からない」という状態になっている情シス担当者は多いと思います。私もこれまでファイアウォールの選び方や無線LANの構成について書いてきましたが、今回はその次のステップとしてEDRを取り上げます。EDRとは何か、どんな製品があるのか、そしてSCS評価制度への対応とどう関係するのかを整理します。この記事を読めば、セキュリティ対策の優先順位と導入の道筋が見えてきます。

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ウイルス対策ソフトだけでは防ぎきれない攻撃が増えている

従来のウイルス対策ソフト(アンチウイルス)は、既知のマルウェアのパターン(シグネチャ)と照合して脅威を検出します。長年有効だった手法ですが、近年の攻撃はこの前提を崩してきました。

ランサムウェアや標的型攻撃では「ファイルレスマルウェア」と呼ばれる手法が使われています。Windowsの正規ツール(PowerShellやWMIなど)を悪用するため、シグネチャベースの検出ではほぼ素通りされます。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2025」でも、ランサムウェアによる被害は組織部門で1位です。

「感染させない」対策だけでなく、「侵入されても被害を最小限にとどめる」仕組みが必要な時代になっています。

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EDRとは何か:アンチウイルスとの違いを整理する

EDR(Endpoint Detection and Response)は、PCやサーバーなどのエンドポイントの動作を常時監視し、不審な挙動を検出・記録・対応するセキュリティツールです。

アンチウイルスとの最大の違いは「侵入後の対応能力」です。

  • アンチウイルス:既知の脅威を侵入前にブロックする
  • EDR:侵入後の動きを追跡し、被害の範囲を特定・封じ込める

たとえば、ある端末が外部の不審なサーバーに接続し始めたとき、EDRはその通信履歴と直前のプロセス起動を記録しています。「どこから感染が始まり、何が実行されたか」をトレースできるので、インシデント発生時の対応スピードが全く変わります。

アンチウイルスを否定するわけではありません。EDRはあくまで「侵入を前提とした備え」として、アンチウイルスの上に追加する層です。

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主なEDR製品の特徴と向き不向き

情シス担当者が検討対象にしやすい主要製品を紹介します。

CrowdStrike Falcon

クラウドネイティブ設計で、エージェントを端末にインストールするだけで稼働します。AIによる脅威検出の精度が高く、管理コンソールの視認性も評価されています。大企業向けのイメージがありますが、中規模組織での導入実績も増えています。

SentinelOne Singularity

自律型AIによるリアルタイム対応が特徴で、脅威を検出後に自動で隔離・ロールバックまで実行します。管理者が手を入れなくても端末単体で対応できる設計です。ランサムウェア被害に遭った場合にファイルを自動復元する機能もあります。セキュリティ専任担当が少ない組織に向いています。

Microsoft Defender for Endpoint

Microsoft 365のライセンスに含まれているケースが多く、既存環境との親和性が高いです。追加費用を抑えたい組織や、すでにMicrosoft環境に統一している場合は導入のハードルが低い選択肢です。

Trend Micro Apex One

国内での導入実績が多く、日本語サポートが充実しています。既存のアンチウイルスからの移行がしやすい設計で、既存ベンダーとの関係を継続しながらEDRに移行したい情シス担当者に向いています。

製品によって強みが異なります。「自組織の管理体制・予算・既存環境」の3点を整理してから絞り込むと、選定が進みやすくなります。

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SCS評価制度とは何か:情シスが知っておくべき制度の骨格

2026年3月、経済産業省が「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」の制度構築方針を公表しました。IPAが運営主体として関わるこの制度の目的は、サプライチェーン全体のセキュリティ水準を可視化することです。

背景にあるのは、委託先へのサイバー攻撃を起点にした情報漏えいや業務停止が相次いでいることです。発注者側からは取引先のセキュリティ対策が見えにくく、受注者側は複数の取引先からバラバラな要求を受けて疲弊する、という構造的な課題がありました。SCS評価制度はこの課題を制度として整理したものです。

評価レベルの構造

制度は★3〜★5の3段階で構成されています。

  • ★3:一般的なサイバー脅威に対処できる水準。自己評価と証跡整理で取得を目指せる
  • ★4:侵入後の被害拡大防止まで対応できる水準。第三者審査が必要
  • ★5:高度な攻撃への対応と、組織全体のリスクマネジメントが求められる水準

まず目指すべきは★3の取得です。社内に情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)がいれば自社で対応でき、いなければアウトソーシングも選択肢に入ります。

EDRはこの★4以上の要件、特に「侵入後の被害拡大防止」に直接対応するツールです。★3取得後の次のステップとしてEDR導入を計画に入れておくと、段階的に対策レベルを上げる道筋が立てやすくなります。いきなり★4を目指す必要はなく、まず★3の自社評価から始めてください。

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情シス担当者がEDR導入を進める手順

いきなり製品選定から入ると、後から環境との相性問題が出やすいです。次の順番で進めることをおすすめします。

1. 管理端末の棚卸しから始める
管理端末の台数・OS構成・既存のセキュリティ製品を整理します。EDRはエージェントを全端末に展開するため、台数規模が費用に直結します。

2. 自社監視かMDR委託かを先に決める
EDRを導入しても、アラートに誰も対応しなければ意味がありません。セキュリティ専任担当が社内にいる場合は自社監視が可能ですが、兼務担当者のみの場合はMDR(マネージドセキュリティサービス)とのセット提案を確認してください。

3. PoC(概念実証)で実環境を試す
主要製品の多くは試用期間を設けています。実際の環境で30日程度動かし、管理画面の使いやすさとアラートの質を確認します。机上のカタログスペックより、実際に動かしたときの感覚の方がずっと参考になります。

4. 特定部門から段階展開する
一気に全端末へ展開せず、まず1部門や1フロアに限定して本番移行します。問題が出ても影響範囲を絞れるので、調整しながら全社展開に進めます。

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まとめに代えて

セキュリティ対策は「何をすべきか分からない」状態が一番危険です。EDRは難しいツールではなく、「感染後に何が起きたかを追える記録装置」と理解すると、社内での導入議論が進めやすくなります。

SCS評価制度が本格運用を迎える前に、まず自社の現状を把握して★3取得の準備を始める。EDR導入はその延長線上にある自然な次の手です。慌てて全部やろうとせず、ステップを踏んで対策レベルを上げていくのが現実的な進め方だと思っています。

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